PHOTO: Shotaro Kato

休日の昼下がりのお気に入りのカフェ。仕事終わりのヨガスタジオ。いつか宿泊してみたい憧れのホテル……心地のいい空気が流れている場所には、いつもリラックスした雰囲気が漂い、自然と人が集っている。そんな居心地のいい場所をつくるためには、きっと、誰かのちょっとした心遣いや、日々の小さな工夫があるはず。私たちがシンパシーを感じ、心地のいい空気の流れる場所を訪ねて、心地よさの理由を伺います。
今回訪ねたのは、鹿児島県・屋久島にあるホテル+ヨガスタジオ「ANANDA CHILLAGE(アナンダチレッジ)」です。

国本さんご家族
国本さんご家族。

サラリーマンをしながら憧れの南の島へ移住

屋久島と東京、二つの拠点でお仕事をされているんですよね?

国本さん そうですね。僕自身は月の半分が東京、半分が屋久島というスタイルです。妻と娘は完全にこちらに移住しています。以前は会社勤めをしていましたが、その時は月の3〜4日を屋久島で過ごすのみでした。昨年会社を立ち上げたので、屋久島で過ごす時間も増えましたね。

こちらへはいつ移住されたんでしょうか。

国本さん 移住したのは2013年。「アナンダチレッジ」をオープンは2015年です。

移住のきっかけは何ですか?

国本さん 昔から南の島に対して漠然とした憧れがあったのですが、直接のきっかけは2011年に屋久島に訪れたことです。先に移住していた友人に誘われてたまたま旅をしたのですが、きれいな海はもちろん、本格的な登山も楽しめたり、おいしい湧き水や熱い温泉など水資源に恵まれていたりと、自然豊かな環境が子育てをするにも最高だなと。そこから移住の夢を温めていました。元々は完全移住をしたかったんですが、今は東京と屋久島の二拠点の生活が楽しいですね。

ご家族とのコミュニケーション不足や移動のストレスを感じることはありますか?

国本さん 東京にいる間は毎日家族とFaceTimeで会話をしているのでコミュニケーションロスはほとんど感じません。旅が好きなので移動そのものも楽しんでいます。



約30 帖のヨガスタジオは天井高が4m と開放的。床は杉の無垢材を使っており、冬でも裸足に心地いい。
約30 帖のヨガスタジオは天井高が4m と開放的。床は杉の無垢材を使っており、冬でも裸足に心地いい。

あたりまえのように満点の星空が広がる暮らし

実際に移住してみていかがですか?

国本さん移住前にイメージしていたとおり、海・山・川・森と自然に囲まれた暮らしであるいっぽう、人がオープンで閉塞感がなくて、生活に不便を感じることもないのは、移住してから気づいた魅力でした。
私たち夫婦よりも子供の環境が大きく変化したことにも、何物にも代えがたい価値を感じています。
娘が3歳の時に移住し、物心がついた頃には屋久島での暮らしだったので、ほぼ屋久島での記憶しかありません。あたりまえのように満点の星空が広がり、海にはクジラやウミガメがいるというのは、東京で暮らしては得られなかった経験だと思います。

国本さんご自身もヨガを暮らしの中で実践されているのでしょうか。

国本さん 妻はヨガを教えていますが、僕自身は毎日やるというわけではありません。ヨガのポーズを取ることもありますが、暮らし自体がヨガやアーユルヴェーダに基づいた生活という感じですね。

それってどんな生活なんですか?

国本さん たとえば、早起きをして日の出を拝み、夜は家でゆったりと過ごすことでしょうか。

この環境ならそうしたシンプルな暮らしも自然と実現できそうそうですよね。

国本さん 屋久島の地質としては、石英などを含んだ花崗岩でできていて、水晶の原石が取れる場所があるせいもあるのか、磁場がとてもよく感じます。

なるほど。今おっしゃった磁場も関係あるのかもしれませんが、数ある南の島の中でも、なぜ屋久島だったのでしょうか?

国本さん 他の場所を考えたとしても、東京で仕事をしているので海外も現実的ではありませんでしたし、沖縄のようなリゾート地も自分にとっては惹かれませんでした。地元の友人夫婦が、私たちよりも先に屋久島へ移住していたのも心強かったですね。

アナンダチレッジを開業されたきっかけは何ですか?

国本さん まず移住がありきです。次に、屋久島で暮らすにあたって何をしようかと考えていた時に、ヨガリトリートができるような宿泊施設が島にはないなと気づき、アナンダチレッジの構想が浮かんできました。

ヨガリトリートとは何でしょうか?

国本さん 自然の中やリラックスできる場所でヨガを行うことです。ヨガを通して気持ちいいひとときを過ごせる場所にしたかったので、ヨガスタジオを備えた質の高いホテルを作ろうと思いましした。

アナンダチレッジという名前は造語ですか?

国本さん そうですね。「アナンダ」はサンスクリット語で「幸福、至上の喜び」みたいな意味があります。娘の名前もそこから取っています。「チレッジ」はチルアウトの「チル」と、「ビレッジ」を掛け合わせた造語みたいなんですが、ミックスマスター・モリスというアーティストの『グローバルチレッジ』というアルバム名から取りました。

ほっこりではなくシャープさのあるナチュラル感

空間づくりにおいて気を配っているのはどのような部分でしょうか。

国本さん ホテルもヨガスタジオもナチュラル感を意識して、床は杉の無垢材、壁は漆喰を使っています。ただ、ログハウスのような“ほっこり感”は出したくなくて、そのバランスは大事にしています。無垢材や漆喰を使ったお店や宿泊施設は島内にもたくさんありますが、アナンダチレッジはナチュラルな中にもシャープさを感じられるよう、コンセプトづくりから設計、アメニティ、備品、サービスに至るまで、すべてに対して気を配っています。

おっしゃるとおり、ナチュラルでシンプルではありますが、どこを見てもきちんとこだわりをもって選んでいらっしゃるのが伝わってきます。

国本さん ベッド本体は屋久島の木工職人の中に手作りで作っていただきました。マットレスはマニフレックス、枕はイタリアの枕専門メーカーであるファベのメディカル枕を使っています。

ベッドひとつをとってもそこまでこだわっていらっしゃるんですね!

国本さん 島の宿泊施設の中で、いちばん寝具やアメニティにコストをかけているのはうちかもしれません(笑)。開業当初はいろいろなゲストに対応しようと思っていた部分もありましたが、そもそも部屋数が少ないので不特定多数に向けた場所にするのではなくて、私たちのコンセプトを理解して、この場所での時間を楽しんでくださる方に来てもらえたらと思うようになりました。先日、ブックコーナーの写真集のコレクションをお客様に絶賛していただいたのは、私たちのコンセプトが伝わった気がしてうれしかったですね。他にも細かいところで言うと、アナンダチレッジは「館内禁煙」ではなく「敷地内禁煙」です。そうすると、たばこを吸う方にはこのうえなく不便を強いることになるので、実質的に選ばれることはないかなと。喫煙者の方は対象としていないという意思表示でもあるんです。

国内屈指の湿度の高さゆえ除湿機はマスト

素晴らしい設備や小物の中でカドーの製品を置いていただいているのは光栄です。?

国本さん 屋久島は国内屈指の湿度の高いエリアです。加湿器を持っている人はほとんどいませんが(笑)、除湿機はみんなが持っていますね。

モノを選ぶ時のポイントはどのあたりですか。?

国本さん 機能性や省エネであることは当然で、圧倒的にデザインですね。

壁が漆喰というのもデザイン性に加えて、調湿機能があるからでしょうか。?

国本さん そうですね。カドーの除湿機は、「衣類乾燥モード」があるのも気に入っています。部屋干しのニオイを防いでくれるのはかなり便利ですね。

ホテル内の香りやニオイ対策で気を配っていらっしゃることはありますか??

国本さん 建物にふんだんに無垢材を使っているので、5年経った今もほんのり杉のいい香りがします。ヨガのレッスン中はアロマオイルやインドのサンダルウッドのお香を焚いています。

お客様はどのような方が多いんですか??

国本さん 日本国内だと、東京や大阪など都心からのゲストが多いです。海外だと、TOP5はフランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国という感じでしょうか。ヨガやアーユルヴェーダに興味があってというよりも、自然体験を求めていらっしゃる方が多いですね。

この大自然に囲まれた環境なら、ヨガだけでなくいろいろなアクティビティを楽しみたくなりそうです。

2 タイプの客室のほか車で15 分ほどの距離には別棟の日本家屋も。
浴室にはジェットバスを完備。アメニティはすべてオーガニック製品という。

What’s
your place
with
good atmosphere?── あなたにとっての居心地のいい場所とは?

Any place keeps my family healthy and peaceful!── 家族が平和で健康に過ごせる場所ならどこでも!

I do not have a particular area in my mind. However, as long as the area can keep my family healthy and peaceful, any place is fine. This may surprise you, but it really doesn’t have to be Yakushima. Of course I love Yakushima, and I think this place is the best place to raise a child, though what makes me love Yakushima is that I’m living with my family and friends.

具体的にココというのはなくて、家族みんなが平和で健康に過ごせる場所ならどこでも居心地よくいられます。意外かもしれませんが、屋久島にも特にこだわってはいません。もちろん大好きですし、子育てをするには最高の場所だと思っていますが、好きな人たちや家族と過ごしているからこそ、屋久島が居心地のいい場所になっているのかなと思います。

ANANDA CHILLAGE(アナンダチレッジ)

ANANDA CHILLAGE(アナンダチレッジ)

鹿児島県熊毛郡屋久島町平内349-69
http://anandachillage.com
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