HOMESCAPE04

By the Pillow

体内時計のチューニング

name | Eric Pillault
occupation | Creative Director,
Graphic Designer
home | Paris, France
second home | Kyoto, Japan
roomspace | 60m2
time difference between Japan and France |
8 hours (7 hours in summer time)

Eric Pillault, a creative director and graphic designer based between Paris and Kyoto, is on the phone with a client in Paris, while it is late afternoon in Kyoto.

パリと京都の二拠点でグラフィックデザイナーとして活動するエリック・ピヨーさん。この日もパリのクライアントと電話でのやりとりが続く。

In a fully renovated traditional machiya (townhouse) in Kyoto, only a futon and a book of poems can be found in the first floor bedroom. Eric usually leaves his cell phone downstairs: “I don’t want to bring my work into the bedroom.” More comforting than the alarm from his phone, Brain Sleep Clock is kept by his bedside: the light like the morning sun and the fresh scent of lemon and rosemary wake him up peacefully.

伝統的な町家をフルリノベーションしたメゾネットタイプの京都の家。2階のベッドルームにあるのは布団と詩集のみ。携帯電話も1階に置きっ放し。「ベッドルームにまで仕事を持ち込みたくなくてね」と話すエリックさんは、iPhoneの代わりに〈ブレインスリープ クロック〉を枕元に置いている。朝陽のような光とレモンやローズマリーの瑞々しい香りで気持ちよく目覚めるのだそう。 

Eric looks out the back door to check the weather: “Seems like it finally stopped raining.” The woody aroma of the cedar used throughout the room, including the floors and walls, is soothing. The wood texture is so pleasant that it makes you want to spend all day barefoot.

勝手口から顔を出して天気を確認するエリックさん。「やっと雨があがりましたね」。床や壁など、部屋全体に杉を使用した空間は、ウッディな香りが癒しを与える。その木の質感はずっと裸足で過ごしたくなるほど心地いい。

The first thing Eric does when waking up is to make coffee. No matter how busy he is, Eric’s routine is to brew coffee by flannel drip.

朝起きるとまずはコーヒー。どんなに忙しくてもネルドリップで淹れるのがエリックさんのルーティン。

A glimpse into Eric’s strong passion for the bathroom. He is very particular about the fragrance. The wash basin and bath chair are also made of cypress.

エリックさんのセンスが垣間見れるバスルーム。特に香りには相当なこだわりが。洗面器やバスチェアもヒノキのものを使用。

There are no white lights in the room, only indirect lighting with a warm, orange glow. Eric likes to make full use of the natural light that filters through the large window and the ceiling window in the living room.

室内に蛍光灯はなく、暖かなオレンジの光が灯る間接照明のみ。リビングにある大きな窓と天井から漏れ入る自然光で生活するのがエリックさんのスタイル。

Eric had a Zoom meeting with the design team in Paris until late last night. Around 3pm the next day, he is feeling a little tired. Drowsiness leads to poor performance, so Eric takes a short nap. He lays down on the cedar floor and uses Brain Sleep Clock to help him fall asleep and wake up.

昨晩は遅くまでパリのデザインチームとZoomミーティングをしていたというエリックさん。まだ少し疲れが残っている翌日の15時ごろ。眠気はパフォーマンスの低下につながるため、少しだけお昼寝。
杉のフロアの上にそのままゴロンと寝そべり、〈ブレインスリープ クロック〉で入眠から起床までをサポートしてもらう。

Eric Pillault

Working as a creative director and graphic designer in Paris, Eric discovered a vacant machiya property in Kyoto in 2018. Since then, he has lived between Paris and Kyoto. Eric comes to Japan four times a year, staying for about a month each time.

パリをベースにするクリエティブディレクター兼グラフィックデザイナー。2018年に京都にある町屋の空き物件を発見し、以降、パリと京都の二拠点生活をスタートした。来日は1年に4回、毎回1ヶ月ほど滞在している。

Precise Objects

The shelf in the living room on page 048 displays items that Eric purchased at local flea markets. The good aroma in the room comes from incense and hiba chips soaked in hiba oil. The natural scents are intricately mixed in a complex yet harmonious way.

P.048のリビングルームにあるシェルフには、エリックさんが蚤の市などで購入したものを陳列。
また部屋のなかに漂ういい香りは、インセンスやヒバオイルをたっぷりと染み込ませたヒバチップから。
ナチュラルな香りが複雑に混じりあい調和している。

Aalto Table and Chair

After much deliberation about what kind of table and chairs would be best for this space, Eric brought this Alvar Aalto table and chairs all the way from Paris to Kyoto (they had been sitting in storage for too long). “They fit perfectly and I couldn’t find anything better.” The artwork hanging on the walls is by London-based printmaker Kate Gibb.

この空間にはどんなテーブルと椅子がいいんだろう……と悩んだ挙句、パリの家の倉庫に眠っていたアルヴァ・アアルトのテーブルと椅子をわざわざ京都の家に運んできたそう。「完璧にフィットしていて、これ以上のものが見つからなくて」。壁にかかっているアートはロンドン出身のプリントメーカー、ケイト・ギブの作品。

product name | BRAIN SLEEP CLOCK
size | φ109mm × h208mm
accessories | USB cable
color | white

Wake Up without an Alarm

Brain Sleep Clock is the first joint development between cado and Brain Sleep, a brain and sleep science company.
The concept behind this “clock” is not to tell the time, but rather to help regulate the rhythm of sleep, which has a significant impact on the comfort of daily life. It supports comfortable sleep onset and comfortable wake-up by making full use of light, sound, and scent. This product is appreciated by people like Eric who work from two locations (in his case one in Japan and the other in France), and have irregular sleeping hours.

睡眠のリズムを整えることは、目覚めている時間を快適さにも大きな影響を与える。そんなコンセプトをもとに制作された〈ブレインスリープ クロック〉は、光や香り、音を駆使して、入眠から目覚めまでをサポートするためのプロダクト。「脳と睡眠を科学する」ブレインスリープと「空気をデザインする」カドーの共同開発で誕生した。エリックさんのように、時差がある日本とフランスの二拠点で仕事をし、時間感覚がイレギュラーな人にとって、また、携帯のアラームではなく自然にスッキリと目覚めたい人にとっては最適な睡眠リズムをデザインする革新的な時計。

HOW PRODUCTS EVOLVED 02
Human Mechanism

「脳と睡眠を科学する」ブレインスリープとのコラボレーションで誕生した〈ブレインスリープ クロック〉。
“クロック”と称されているものの、時間を知る時計ではなく、光、香り、音で睡眠リズムをデザインし、1日のパフォーマンスを高めるためのデバイス。
株式会社ブレインスリープ社の代表取締役を務める道端孝助さんに〈ブレインスリープ クロック〉の誕生秘話について聞きました。
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体内時計を器官から整える 株式会社ブレインスリープ代表取締役 道端孝助

日本が睡眠負債大国として世界的に有名なことはご存知ですか? 2019年に創立したブレインスリープは「最高の睡眠で、最幸の人生を。」をコンセプトに良質な睡眠を実現することを目指す集団。日本に限らずですが、多くの人は、スマートフォンが枕元にある状態で寝て、アラームで起きている、もしくはパートナーのアラームで起きています。ただアラームで起きることが気持ちよくないとかうるさいと思っている人はどうやらたくさんいる……と。

確かにスマートフォンのアラームは起きることを考えて作られたものではありません。私自身を含め、もっと気持ちよく目覚められるようなプロダクトに実はニーズがあるんじゃないかと、会社を創立した時から考えていました。

“心地よく起きる”。そうするためのポイントはサーカディアンリズム、つまり体内時計を整えることにあります。分かりやすく体温の話をしましょう。体温は朝に上がり、日中に少し下がり、また夕方ごろに上がり、寝るときに下がります。これらはサーカディアンリズムによってすべてコントロールされています。体温は、心拍数、脳の温度やパフォーマンス、それに内臓の消化機能にも密接に関係しているもの。簡潔にいうと、体内時計を整えることによって、生活リズムが整い、上質な睡眠を促すことができるというわけです。

そこで私たちが考えたのが、光と香りと音の3つの要素を兼ね備えた寝室におけるデバイスでした。この3つの中でも、一番大きく影響するのが光。朝陽を浴びると目が覚めるように、光をたくさん浴びることで脳は覚醒モードに入ります。一方1/fと呼ばれる炎の揺らぎは、安心感や落ち着きを与える光で入眠時に適した光です。

さらに、脳にダイレクトに刺激を与えるのは嗅覚だと言われています。寝るときにはカモミールのようなリラックスできる香りで、朝起きる時はフルーツのような瑞々しい香りを。このように目覚まし時計やアラームといった音だけでなく、光や香りを駆使し、器官に対して徐々にフェードイン/フェードアウトしながら刺激を与えることで、生体リズム、ないしは1日のリズムを整えていくのがこのブレインスリープ クロックです。

実はプロトタイプは自社で作成したのですが、より多くのお客様に上質な睡眠を提供するためには、デバイスの開発や、機能とデザイン性の両立など、私たちの専門外の部分でのサポートが必要だったので、カドーに協力をお願いしました。さまざまなスタイルの寝室にフィットする、まるで灯篭のようなスタイリッシュなデザイン。そしてアロマの噴霧をマイクロミスト状に細かくすることで空間全体に対流させる、そしてその噴霧を一定にコントロールするアイデア。1/fのゆらぎという自然界にある動きをきちんとプログラミングして搭載する。これらを実現するカドーの技術力があったからこそ完成した製品です。

道端孝助

慶應義塾大学理工学部応用化学科、東京大学大学院農学生命科学研究科を卒業。2019年に株式会社ブレインスリープを設立し、スタンフォード大学で睡眠研究をする西野精治と共に共同代表に就任。「最高の睡眠で、最幸の人生を。」をコンセプトに掲げ、睡眠に特化したプロダクトの開発や、企業へのコンサルティングやITを活用したサービス、医学的根拠がある睡眠情報の発信などを展開する。